
第6章 おわりに
6.1 まとめ
本研究では、次元概念を表す三次元形容詞「厚い・薄い」を研究対象とし、プロトタイプ的理論と概念メタファー理論の観点から、その意味項目、拡張メカニズム及び非対称性現象について検討した。分析結果から見ると、「薄い」は「厚い」より意味項目がはるかに上回り、各拡張領域の分布率がばらつきが見られた。「厚い」は概念メタファーを介して、「量」「濃度・密度」「品質」「心理」の抽象概念、「薄い」は概念メタファーを介して、「量」「濃度・密度」「五感」「働きの度合い」「印象」「心理」などの抽象概念への写像が明らかになる。その非対称性の背後にある要因について、以下のように解析されている。
①次元形容詞が修飾されている語のカテゴリーについては、段階性があれば、「厚い」も「薄い」でも使われる。段階性がなければ、「薄い」が「ある」と対応する場合と「厚い」が「ない」と対応する場合に分けて議論する。
②次元形容詞は相互補完性が高く、「薄い」と対応する意味が次元概念に他の次元形容詞で表現できれば、兒童心理学の学習順序により、他の次元形容詞が優先されるにより、非対称現象が生じる。
③語用原則によれば、人間が次元形容詞を使用する際には、「目立ちの原理」と「経済原則」に基づいて言語表現が選択されることになり、次元形容詞の相互補完性がさらに説明される。
参考文献(略)
